先日、日本人でパスポートを持つ人が20%にも届かないというニュースを見て、自分自身も30年以上持ち続けたパスポ-トを2024年末をもって更新しなかったことを思い出しました。
1993年初にパスポートを初めて持って以来、海外駐在や出張の可能性がある会社勤めを終えるまでずっと持っていたのですが、仕事が変わり海外駐在の可能性はゼロになったし、当分海外旅行や出張もしないだろうし、費用も相応にかかるので更新しませんでした。
海外からの観光客が推計で年間4,200万人以上訪れる我が国で、日本人のパスポート保有率が20%に満たないというのは結構インパクトある数字です。2025年の日本人の海外出国者数は推計1,400万人強だったそうです。観光客数、日本人出国者数は日本政府観光局(JNTO)ホームページより
日本人の人口を1.2億人として、その約35%に相当するインバウンド観光客に対し、12%弱のアウトバウンド観光客。日本人の5人に1人もパスポートを持たないということは日本人海外旅行者の多くがおそらくリピーターなのだろうと推測します。
私の人生初の海外旅行は大学卒業旅行でした。33年前に往復15万円程度の格安チケットで1カ月の欧州バックパック旅行をした者として、昨今のエアチケットは高嶺の花。仮に33年前のエアチケット代が今の水準であったなら、欧州旅行を企てる勇気は到底湧かなかったに違いありません。当時の旅費は全額学生ローンで調達し、就職後に分割弁済しました。
いまの状況は悪循環を招くのではないかと少々危惧します。
円安・エアチケット高騰で海外にいかない(いけない)→海外事情に疎くなる→日本にいる外国人の振る舞いに対して不寛容になる→ますます海外への関心が低くなる→ますます海外事情に疎くなる→ますます海外に行く必要性や意義が見えなくなるという無限のループのようにも見えます。
海外を知る最大のメリットは、実はほかでもない日本を深く知ることができる点にあります。日本では当たり前のことが、世界的に見れば全然当たり前ではないこと、日本がいかに恵まれた国であるかを実感することができます。とくに先進国ではない国々を訪れるとなおよくわかります。
インバウンド観光客や日本への在留希望者が増える一方なのは、食事が美味しいからとか、観光資源が豊富だから、というだけではないと思います。日本のように治安が良く、夜間に女性や子供が外を歩くことができる国は、世界的にみれば極めて少数派です。
公共交通機関が時刻表通りに動いたり、宅配便が細かい日時指定できっちり届いたりするような国も極めて稀でしょう。私は以前住んでいたある国で指定通りの日時に荷物が届いたことが一度だけあって、腰が抜けるほど驚きました。来るわけないと思っていたのですれ違いに出かけるところでした。
好んで日本へ遊びに来る観光客や永住・帰化を希望する人たちは別として、仕事で日本に来る外国人の多くは、必ずしも好んで日本に来ている訳ではないということも理解すべきだと思います。何らかの事情があって母国を離れ、在留資格によっては家族を連れてくることさえ許されず、そんな環境で日本に貢献している多くの外国人がいます。母国で何不自由なく生活することができるなら、わざわざ日本には来ないはずです。パスポートを持たない日本人が圧倒的多数になってしまうと、このあたりの状況に対する深い理解が及びにくくなるのではないかと危惧します。
私はこれまで世界45か国を往訪しましたが、一番印象的だったのはキューバでした。本年7月からパスポート発行手数料が従来の半額程度まで引き下げられるようなので、この機会に再取得しようかと思い始めています。
出典:日本政府観光局(JNTO) 2025年 訪日外客数・出国日本人数