大規模災害時への備えという点ではとても重要な法律だと思います。残念ながら、首都圏における大地震は「起こるか否か」ではなく、「いつ起こるか」という問いにシフトしている以上、何も手を打たずにいることはできないと思います。
ところで副首都関連法案と大阪都構想の分かりにくくてねじれた関係をひも解くには、もともと副首都構想とは全く関係がなかったはずの”大都市地域における特別区の設置に関する法律”をまず読み返す必要があります。ちなみに特別区は現時点で東京23区だけです。
「(目的)
第一条 この法律は、道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設けるための手続並びに特別区と道府県の事務の分担並びに税源の配分及び財政の調整に関する意見の申出に係る措置について定めることにより、地域の実情に応じた大都市制度の特例を設けることを目的とする。
(道府県の区域内における特別区の設置の特例)
第三条 地方自治法第二百八十一条第一項の規定にかかわらず、総務大臣は、この法律の定めるところにより、道府県の区域内において、特別区の設置を行うことができる。
(特別区を包括する道府県に対する法令の適用)
第十条 特別区を包括する道府県は、地方自治法その他の法令の規定の適用については、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、都とみなす。」(大都市地域における特別区の設置に関する法律 以上出典:e-GOV法令検索 )
特別区を包括する道府県を法的に都と同等に扱うということですが、そもそも地方自治法の基本的考え方として国も地方公共団体も全て対等な立場としていますので、都が県より上位に位置するわけではありません。呼び名が違うだけです。
今回成立した副首都関連法は上記の”大都市地域における特別区の設置に関する法律”の一部改正も盛り込まれています。新たに追加される条文は次の通りです。
「(特別区包括副首都の名称変更の特例)
第十一条 地方自治法第三条第二項の規定にかかわらず、特別区を包括する道府県であって副首都(国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律(令和八年法律第▼▼▼号)第二条第四項に規定する副首都をいう。)であるもの(以下この条において「特別区包括副首都」という。)の名称の変更(道府県を都とする変更に限る。)は、当該特別区包括副首都の申請に基づき、内閣が国会の承認を経てこれを定めることができる。」
つまり副首都となる道府県が都に名称変更することを希望する場合、(当該道府県)議会の議決を経て、名称変更を申請すれば、内閣が国会の承認を経てこれを定めることができる(つまり道府県の名称を都に変更することができる)という趣旨が新たに追加されました。
ここで”特別区を包括する道府県であって副首都であるものの名称の変更”という主語の部分を注意深く読むと、道府県が都に名称変更するためには、特別区を包括する必要があると解釈できます。つまり大阪府が副首都として大阪都になるためには、やっぱり大阪市を廃止することが条件になるということです。意図してこういう書きぶりになったのか否かはわかりません。
名称が道府県のままでも有事の際に首都に等しい機能を発揮できる法的な手当てと体制が整ってさえいれば十分であり、そもそもそのような事態は一度も起こらないことがベストです。それに当該道府県民にとっては生まれながらの愛着のある福岡県や北海道が福岡都や北海都になることを望むでしょうか。有事の際の首都機能代替を果たすまちづくりとその道府県の名称とは全然無関係だと思います。
本来であれば、副首都などという中途半端な政策ではなく、首都移転が望ましいのかもしれませんが、それはそれで巨額の費用と膨大な時間がかかり、とても今の我が国がそのような遠大なプロジェクトを推進できるとは思えないので、副首都(バックアップ)をどこかに一刻も早く用意しておくことは大賛成です。一番本質的なことは、有事の際に政府が問題なく機能することであり、そのための協力が求められる民間企業も滞りなく活動でき、早期の復旧と復興ができるようしっかり準備しておくことだと思います。ちなみに私たち行政書士は災害発生時の罹災証明発行等、具体的な職務遂行が期待されています。
参照:衆議院ホームページ 議案本文情報一覧
注意:以上は当職が2026年7月25日現在で知り得た一般情報に基づく、当職独自の見解です。