最近、しばしば目にする外国人の在留資格厳格化の話ですが、かつて外国人として3か国で11年間暮らした経験を持つものとして、本邦在留外国人の在留資格厳格化について、逆の立場から考えてみたいと思います。
【違和感1】日本の在留資格は細分化されすぎている弊害が多いのではないか。
出入国在留管理庁のHPによれば、日本で行う活動内容に応じた在留資格は実に24種類もあります。また24番目の在留資格”特定活動”はさらに内訳が細分化されています(詳細は同庁HPご参照)。これほどの細分化(良くも悪くも日本的ですが)は手続の混乱、重複やミスを招き、不利益が多いのではないかと直観的に思います。
類似性のある資格をまとめて手続を極力簡略化し、一方でじっくり中身を見なくてはならない資格の審査には十分リソースを投入できるようメリハリのあるルール運用が求められると思います。
たとえば、大学教授の在留資格は”教授”ですが、高校の英語の先生は”教育”です。他方で、”高度専門職”という在留資格もあり、同庁HPでは「我が国の学術研究や経済の発展に寄与することが見込まれる高度の専門的な能力を持つ外国人の受入れをより一層促進するため、他の一般的な就労資格よりも活動制限を緩和した在留資格として設けられたもの」などと説明されていますが、”教授”との大きな違いがあるのかどうか一見しただけではよくわかりません。そしてそれらに近いものに”研究”という資格まであります。
他にも”芸術”と”興行”も一見区別し難く、さらには「収入を伴わない学術上若しくは芸術上の活動又は我が国特有の文化若しくは技芸について専門的な研究を行い若しくは専門家の指導を受けてこれを修得する活動は”文化活動”」となります。これもそれほど重要な区分なのでしょうか?すべて”文化活動”でも構わないような気がします。収入を伴わない文化活動で日本に中長期的に滞在できる許可という建てつけにもそもそも違和感があります。
いずれも違いがあるから別の資格になっているのでしょうけど、果たしてそれほど重要な相違点であるのだろうかとの疑問を全体として禁じえません。
制度が複雑であればあるほど我々専門家が必要とされる場面が増え、我々にとっては仕事の機会が増えてありがたいことかもしれませんが、それはミクロ的視点であって、国家的全体最適の見地からマクロ的に見渡したとき、改善・簡素化すべき点は少なくないと思います。申請書類を審査する入管の人材もいま現在、余ってはいないはずです。
日本での在留資格を取得したい外国人目線で考えれば、できるだけ上位のカテゴリーを求めるでしょうし、外国人の頭脳、知見、労働力を頼みにする雇用者たる日本人目線で考えれば、できるだけ長く一つの仕事に従事してくれて、当然ですが、素行が良好で(できれば日本語の、最低仕事の)能力が高い外国人を欲するでしょうから、類似した在留資格は最上位カテゴリーでひとまとめにし、その許可要件をクリアできる人材であればある程度柔軟に実際の就労スタイルを選好したり、就労セグメントを行き来できたりする方が、長い目で日本にもメリットがあるはずです。細分化すればするほど該当する人材を発掘したり、採用したりし難くなり、結果的に審査も長期化・難化するだけではないかと思います。
まったくの私見ですが、”高度専門職”で一括りできる可能性の高い在留資格は上記の教授、教育、研究に限らず、法律・会計、医療、技術・人文知識・国際(通称:技・人・国)等、ざっと見る限り24種類のうち半分くらい集約できるのではないかと思います。ただ日本にとっては片思いで、本当に高度な知識やスキルを持つ専門職は日本に来ずとも高い報酬でどこでも仕事を得ることができるため、日本には残念ながらあまり定着しない、永住希望者もそう多くないと聞いています。
私が海外駐在したときの経験からですが、「その在留国で仕事をするのか否か」が、最も重要な判断基準=許可要件でした。仕事をする場合の在留許可審査ポイントは、「なぜ日本人でなければいけないのか。現地スタッフの増員では事業目的を果たすことができないのか。その日本人には、業務遂行に必要な能力や経験があるのか。」という点に尽きるものでした。説明ロジックは「日本語ができることが業務上、対顧客サービスで必須であり、日本人のマネージャーが日本の組織運営上必要だったから。」という程度のものでした。
私のケースは、いまの日本でいう在留資格のうち”企業内転勤”か、”技・人・国の国際”に相当する資格だったと思います。相応の規模の日本企業に勤める正社員であったことが、審査が緩めになる要素であったのかもしれませんが、類似したルールは日本でも適用されています(たとえば本邦上場会社等の大企業が外国人を雇用する場合には提出書類が少なくて済む等)。
3つの国のうち、入国審査の段階で将来的な在留・就労を前提とした許可を得る必要があったため申請から渡航まで半年以上時間がかかったケースもありましたが、短いケースでは出張者としてとりあえず入国し、入国後に在留・就労許可に切り替えるパターンもありました(但し、最近は派遣元である日本企業のコンプラ上の要請で、入国当初から就労前提の在留資格取得手続をすることが一般的)。どの国でも、入国後に現地の(今にして思えば)行政書士に相当する人と一緒にイミグレーションを往訪し、就労・在留許可を得る点は共通でした。在留・就労許可はいずれも原則1年更新だったと記憶しています。5年目以降は複数年の更新になる国もありました。
【違和感2】留学生等の本来就労すべきではない人に、週28時間とはいえ就労を許可する制度自体が間違っているのではないか?
留学目的の種類を問わず、留学中は勉学に集中すべきであるにもかかわらず就労を許可することはそもそも制度として自己矛盾しており、この制度が結果的に不法就労の温床になっているのではないかと思います。電動自転車で宅配サービス活動に従事する外国人を私の生活圏でもたくさん見かけますが、全員が週28時間ルールを100%遵守しているのか疑問を禁じえません。もしそうした外国人がその仕事に就くことができる別の在留資格があるとすれば該当性ある資格は何なのか不勉強で知りません。
【違和感3】なぜ、犯罪経歴証明書を必要としないのか?
日系3世など一定の条件下の定住者には 申請人(=当該日系人)の犯罪経歴証明書(本国の機関から発行されたもの)の提出が求められます。定住者ではない外国人の場合、日本への上陸許可を申請する際、過去の犯罪歴を自己申告しなくてはならないことになっています。当然、嘘をつけば虚偽申請となり、上陸不許可の理由になります(犯罪歴を一律不許可理由にしている訳ではありません。上陸が認められる犯罪歴もあります)。ですが、より透明性の高い犯罪経歴証明書までは要求されていません。
私が駐在した3つの国のうち2つは入国審査時点で本邦警察署発行の「犯罪経歴証明書」の提出が必須でした。残りのひとつは入国するや否や、現地の国際刑事警察機構(Interpol)に出頭し、指紋と顔写真を取られ、国際指名手配になっていない、無犯罪であることをまず確認されました。正式な在留・就労資格取得手続きは、無犯罪であることが確認できて初めてスタートしました。なお、入国審査の申請時点で、現地での労働契約の写しや学歴(英文卒業証明書)は提出しています。ちなみに犯罪経歴証明書を私に求めた3つの国は日本より治安面で不安定な国々です。
【違和感4】なぜ、特定技能の外国人に上限を設けるのか?
特定技能の”外食分野”が外国人の人数上限に達したことが最近話題になっています。就労に制約のない(=就労しなくてもよい)永住・帰化に上限を設けても大きな問題にならないと個人的には思いますが、マンパワーが必要だから設定されている”特定技能”からは上限撤廃または上限を上げる等の手当がなされた方が良いと思います。特定技能の外国人に支払うべき給与は日本人と同等以上でないと法令違反になりますので、採用にかかる手間やコスト、採用後の生活支援等も含めると、特定技能の外国人を雇用することに経済的メリットはないに等しいと考えます。むしろ、日本人より高くなるのではないでしょうか。この点は誤解されやすいポイントです。
先行き不透明な中東情勢ですが、仮に早期に関係当事国間の合意がなされ、すべてが元通りになることが確認されれば、戦後復興需要が一気に盛り上がり、一転してこんどは中東とわが国を含むアジア諸国との間で人材獲得競争が激化する可能性があると思います。戦争被害の大きなイランはもとより、流れ弾を被弾した周辺国もインフラ再建に躍起になるでしょうから、従来より高い報酬を用意して、東南アジア・南アジア人材を募り始めると予測します。そうすると特定技能で外国人が上限に達するのは時間の問題と懸念されている分野で、逆に人材獲得が困難になる可能性も否定できないと思います。
いずれにしても、三顧の礼をもって日本に来てもらうべき外国人材とただちに日本から出国してもらい再入国できない条件を課すべき外国人材との明確な区別をしなくては、日本人はもとより日本社会に貢献している多くの外国人の双方が困惑する世の中になっていると思います。
出典:出入国在留管理庁 https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/index.html
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