1993年1月私は初めての海外旅行に出発しました。友人と二人で1か月の欧州フリー旅行でした。広島から福岡へ移動して大韓航空でソウル経由、ロンドン行。当時は機内でも普通に喫煙していました。現地ではユーレイルパスでいろいろな国を周遊しました。まだ各国が自国通貨を発行していた頃で、お国柄を反映した紙幣は非常に興味深いものでした。ロンドンで新年のバーゲンセールで5千円で買った(今では珍しいイギリス製の)バーバリーのセーターはいまも着ることができます。ミラノで飲んだエスプレッソの美味さそして安さは忘れられません。
鉄道の旅もお国柄が良く表れていました。国際列車には1等車と2等車があり、私たちが1等車に乗っていると残念ながら怪訝な顔をされたりもしましたが。車掌さんが口笛を吹きながらやってきて、切符をチェックをしてくれたフランスは一番印象的でした。スペインは当時、ちょっと緊張する国でした。ただ列車内のトイレは多くの国で線路への放出式だったと記憶しています。もっとも、30年以上前とは言え、特に不自由なく、トラブルにも遭わず、良い経験をすることができました。就職してほどなく、仕事で欧州の地を踏むことになったのは、この旅行の良い思い出があったからこそです。旅行はローンでしたから、就職後に返済しました。
名誉のため国名は伏せますが、以前(そんなに昔ではありません)、某国のエアラインに乗り、機内のトイレがだんだん汚れていったのを見た経験があります。使用済みトイレットペーパーがゴミ箱に捨てられ、そのうちゴミ箱が満杯になってしまい、最終的には足許に放置されることになったからです。日本でずっと暮らしている方には「こいついったい何の話しているの?」と意味不明だと思いますが、トイレットペーパーを便器に流せない国はいくらでもあります。下水管が詰まる懸念が大きいのが最大の理由で、ペーパー自体の質が悪く、水に溶けないという事情もあります。つまり、その某国の飛行機の多くの乗客にとって、トイレットペーパーは便器ではなく、ゴミ箱に捨てることが当たり前だったのです。
私もそうした環境で暮らしていました。公衆トイレでは、便座があればかなりラッキー、便座にひび割れがなければ相当ハイレベル(温かい便座など存在しませんでした)。そしてトイレットペーパーが残っていたらそれは奇跡に近いです。ウォシュレット…あるはずありません。海外駐在員にはウォシュレットを日本から持参して使っていた方もいました。しかも、トイレットペーパーは流せないので捨てるための専用容器が個室に備え付けられています。
ここまで書くと、続きを読む気が失せる方が多いと思いますが、災害が発生したら、このような状況になることを覚悟しておかなくてはなりません。しかも、汚物を水洗することもできなくなります。最後は腹をくくって、「ほんの数分前まで自分の体内にあったものだ。」と言い聞かせるしかないかもしれません。少なくとも自分の排泄物に関しては。
日本では、トイレはどこでも清掃が行き届き、(当たり前ですが)便座もきれいで、ペーパーも常に補充され、ウォシュレットまで標準装備、たぐいまれなトイレ大先進国です。せめて、汚さないように後の人に配慮しながら使うことを心掛けることが、日々清掃してくださっている方々へのお礼であり、災害時には唯一できることかもしれません。BCPの観点では、従業員の安全と安心を守る意味から、災害時のトイレ問題は日ごろから周到なシミュレーションが求められると思います。