建設業法第17条の2 事業承継認可について

建設業法第17条の2という条文があります(後掲リンクご参照)

建設業許可を受けている事業者Ⅹが別の事業者Yにその事業を承継する場合、国土交通大臣または都道府県知事の認可を条件として、Ⅹの建設業許可をYが引き継ぐことができる制度です。Yが今現在建設業許可を受けずに建設業を営んでいる事業者であっても適用対象です(もっとも、建設業許可を得るためのヒト・モノ・カネの要件を充足する必要は当然あり、この制度を活用したとしても、Yに適用される許可要件が緩和されるわけではありません)。Yが受けた建設業許可の有効期限は承継の日の翌日から起算して5年間です。

ただしⅩの建設業許可の全部をYが引き継ぐことが認可条件なので、引き継がない事業がある場合にはⅩはその事業をあらかじめ廃業しなくてはなりません(たとえばⅩが持つ「しゅんせつ工事」の許可をYが引き継がない場合等)。

建設業界ではかねてより、人手不足、資材不足(及び高騰)で経営環境は厳しい状況が続いていると理解しています。(余談ですが、私の住む東京都中野区のシンボルである”中野サンプラザ”も建設費高騰で再開発がとん挫したままです。できることなら中野サンプラザは解体せず、リノベでよみがえらせてほしいと個人的には思いますが。)

加えて今般の中東情勢悪化によって建設業界を取り巻く経営環境は一層困難な状況となりつつあります。ゆえに建設業界の大再編は待ったなしと思います。とりわけ中小の建設事業者間の合併や事業承継が活発化すると思います。

この制度で前提とされている事業承継の方法は①事業譲渡、②合併、③分割*の3つです。建設事業者がこの制度を活用する最大のポイントは建設業許可が切れ目なく続くことにあります。つまり、事業譲渡、合併、分割の法的効力が発生すると同時に建設業許可も取得できている点にあります。この制度を使わない場合、事業譲渡や合併などの法的効力発生日以降に新規申請することになりますので、事業者は新しくなったのに、許可があるまで営業活動をすることができない経済的損失を覚悟しなくてはなりません。

そしてポイントのもうひとつは、Ⅹの建設業者としてのヒストリーをYが承継できる点にあると私は考えます。Ⅹのヒストリーを遺さない方が望ましい場合もあるかもしれませんが、建設業者としてⅩの評判が高かったのであれば、Ⅹの許可番号をYが引き継ぐ意味は大きいと思います。またⅩの従業員はYの従業員として働き続けることが一般的には望ましいでしょうから、その場合もⅩのヒストリーや顧客基盤が保存される意味は大きいと思います。

事業譲渡(ⅩがYに事業を売却する)の場合、Ⅹの従業員は当然にはYに引き継がれません(従業員1人1人と個別に同意する必要があります)。一方、存続会社をYとしてⅩがYと合併する場合や、Ⅹが建設事業を分割してYに引き継ぐ場合は、合併によって消滅するⅩの従業員、分割対象となるⅩの事業に従事していたⅩの従業員は原則Yに引き継がれることになります。

ちなみに認可申請書には、「事業譲渡の理由とその対価」、「合併の理由とその価格」、「分割の理由とその価格」を記載することになっており、一般都民の閲覧に供される情報であることを意識しなくてはなりません(建設業許可申請変更の手引 令和7年度 東京都都市整備局市街地建築部建設業課 119~121頁)。

この制度の活用に際して、東京都知事認可の場合、東京都への事前相談が、国土交通大臣認可の場合、地方整備局への事前相談が必須となっています。そして東京都の場合、認可申請日と承継予定日の間に開庁日が25日必要とされています(同上の手引 112頁)。

なお、ある業種でⅩが特定建設業許可をYが一般建設業許可をそれぞれ既に持っている場合、一つの事業者が同一業種で特定建設業と一般建設業を兼ねることはできないため、どちらかの許可を事前に廃業する必要があります。Ⅹが一般でYが特定でも同じ(同上の手引 114頁)。

事業譲渡、合併、分割の法的手続は、従業員、株主、債権者など利害関係者の権利を侵害しないように、私たち行政書士はもとより、弁護士・公認会計士、税理士・司法書士・社労士等各分野の専門家に相談しながら慎重に進める必要がありますので、相当程度の時間的余裕が求められます。

建設業法(出典:e-GOV法令検索)

第四節 承継
(譲渡及び譲受け並びに合併及び分割)

https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100#Mp-Ch_2-Se_4

*「会社分割とは、ある会社(分割会社)がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることをいう(引用者注:図表は省略)。会社分割のうち、既存の当事会社(承継会社)が、分割会社の権利義務を承継するものを吸収分割という(2条29号)。会社分割により新たに設立する会社(設立会社)が、分割会社の権利義務を承継するものを新設分割という(同条30号)会社分割は、事業の買収やグループ企業の再編等に活用されている。」引用文献:会社法第5版(東京大学出版会)田中亘677~678頁。(引用者注:引用文中の条文番号は会社法のものです)

参考書籍・引用文献

  • 事業譲渡の実務第2版(弁護士法人大江橋法律事務所関口智弘弁護士他/商事法務)57、63頁
  • 建設業許可申請変更の手引 令和7年度(東京都都市整備局市街地建築部建設業課)
  • 事業承継ガイドライン(第3版)令和4年3月改訂 (中小企業庁)
  • 会社法第5版(田中亘/東京大学出版会) 677~681頁

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