改正行政書士法が成立しました

5月30日に衆議院本会議で、6月6日の参議院本会議でそれぞれ可決され成立しました。2026年1月1日施行となります。

大きな改正点は以下2つです。

無資格者の排除

行政書士(法人)でない者が、業として他人の依頼を受け「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは完全な違法行為になります。仮に名目が”会費”であっても報酬に該当します。もちろん、弁護士、税理士、社労士等の他の専門士業に認められた業務は除き、ブローカーなど無資格者による行為を違法とする趣旨です。

行政不服申立て手続への更なる関与(特定行政書士の業務範囲拡大)

現行法:許認可等を官公署に申請したが不許可になり、その不許可に不服があれば、行政上の不服申立て(審査請求、再調査の請求、再審査請求等を包括して行政不服申立てと言います)をすることが一般に認められています。現行法では「行政書士が作成した」書類で不許可等になった場合にのみ、特定行政書士は行政不服申立てをする人の代理人になることができるとされています。

行政不服申立ては、”行政不服審査法”という、よほどのことがない限り、普通の人は人生で一度も触れることはない法律に基づいて行う難解な手続きです。不許可に納得できず、行政不服申立てに踏み切ろうにも、普通の人は、何をどうしたらいいのか見当もつかないのではないでしょうか?

不許可処分を下した行政機関の通知には、「この決定に不服があれば、いついつまでに、だれだれに対して審査請求を行うことができます。」といった無味乾燥な文章が綴られているだけです。懇切丁寧な説明があるわけではありません。

普通の人には、不服申立て書類の書き方・出し方など一連のプロセス、口頭で意見を述べる機会があるのかないのか、そもそもだれとどんな議論をするのか、最終的にどうなれば結論が出たことになるのか、等々疑問が尽きないはずです。

許認可申請をする人も行政書士に書類作成を依頼するとは限りません。申請者が自分で書類を作成・申請して不許可になってしまうと、行政不服申立て手続に、申請者が自分自身で臨むか、弁護士に代理人を依頼することが必要でした。このケースであっても、特定行政書士であれば申請者の相談相手にはなることができますが、代理人として直接交渉に臨むことはできません。

改正後:申請者が自ら書類を作成し、官公署に申請して不許可や不作為(申請に対して、必要以上に長期間にわたり行政が何もアクションを起こさないこと)等になった場合であっても、当該申請書類が「行政書士が作成することができる書類」であれば、特定行政書士は行政不服申立て手続において申請者の代理人になることができるようになります。

官公署に提出する書類の扱いは行政書士の本業です。行政書士試験に合格するためにはもちろんですが、特定行政書士になるためにはなお一層掘り下げて、行政不服審査法をみっちり勉強し直し、そこに民事訴訟法の基礎も加えて勉強し、そして試験に合格する必要がありますから、行政不服申立て手続において代理人になることができる特定行政書士の存在意義がここにあります。なお、行政書士に行政不服申立て手続の代理人資格は引き続きありません。

”特定”という言葉が頭につくと、フルスコープの業務ができない行政書士であるかのように勘違いされることも残念ながらままありますが、特定行政書士は、通常の行政書士業務にも当然従事することができる、行政書士の資格内上位資格です。

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