昨今の人口減少・高齢化、フードロス問題、食の安全意識の高まり、原材料価格高騰・不安定化、サプライチェインのグローバル化/分断リスク等への対処は、足許注目を浴びているコメ問題もあいまって、食料安全保障上、喫緊の課題ではないでしょうか。
こうした食品サプライチェインへの懸念に対して、国内原材料産地と食品製造事業者が連携することによって国産原材料を用いた製品アウトプットを増加させる事業に、以下のような補助金が交付されます。
応募対象者:食品製造事業者
公募期間:2025年6月12日(木)から7月15日(火)17時まで
補助事業の完了期限:2026年2月12日(木)
補助率:1/2以内
補助上限:2億円(下限100万円)産地支援の取組みの場合は1件当り上限3億円
「公募申請のポイント:『事業計画書【事業の目的】』の情報の整理として、サプライチェーン上のメリットを意識し、生産者と連携かつ生産量が増えることを考慮して計画を整理する」主宰者説明資料より抜粋
詳細はhttps://jmac-foods.com/genzairyou/r6/ をご覧いただくとして、興味深かったのは以下の点です。
たとえば、米、小豆、小麦、卵、生乳等の食品原材料の生産者に対して、それらの生産者から長期契約で調達することによって国産原材料を用いた製品を増やす食品製造事業者が、生産者を支援することへのバックアップであるという点です。
具体的には、生産者自身では新規調達が難しい農薬散布ドローンや草刈りロボットといった機材を、その生産者から原材料を調達する食品製造事業者が調達してその生産者へ貸与若しくは提供する仕組みです。
高齢化が進行する生産者は新たな設備投資には二の足を踏むでしょうし、一方、原材料を調達したい食品製造事業者も自社の求めるスペックやロットが約束されないと長期契約は締結し難いという両すくみ問題つまり悪循環があると思います。
その悪循環は結果的に国産原材料の使用量を減退させ、更に国産品の製造量が伸び悩むという構造的問題でもあります。その悪循環を断ち切る意図がこの補助金の本質と理解しました。
一見、迂遠なやり方にも見えますが、生産者には余計な設備投資をせずに長期契約できるメリットがあり、食品製造事業者には国産原材料の安定調達による新製品開発や製造量増加が可能になるメリットがあります。さらに消費者には、安心の国産原材料を使った食品をより多く購入できるメリットがあります。
この補助事業主宰者のHPには、BCP(事業継続計画)という言葉は一切出てきませんが、この補助事業の仕組みや考え方は、連携型BCPそのものです。食品製造事業者が、原材料調達先との連携を強め、できれば原材料生産地のポートフォリオを分散させることで、地理的・気候的リスクも分散させることが可能になります。生産者も複数の食品製造事業者と連携することで、供給先のリスクを分散させることができます。
そしてなにより大切な資源であるおカネに関しては国が半分面倒を見てくれる、というありがたい施策ですので、大いに活用すべきと考えます。