元銀行マンの行政書士が作りたいBCP(事業継続計画)⑥ 2025年版「中小企業白書」が語る経営環境について考える

2025年版「中小企業白書」は、中小企業を取り巻く環境を次のように説明しています。(「第1部 令和6年度(2024年度)の中小企業の動向」を適宜引用、要約)

「売上高・経常利益の推移として、大企業・中小企業ともに2021年第一四半期を底に増加傾向にある。中小企業の経常利益は2020年第3四半期を底に増加傾向で推移しているが、大企業と比較して伸び悩んでおり、その差は拡大傾向にある。(ここでの中小企業とは資本金1千万円以上、1億円未満、大企業は資本金10億円以上の企業 4-5頁)」

「中小企業は大企業と比較して借入金依存度が高い。中小企業では7割を超えている。借入金利の上昇は支払利息の増加による経常利益の下押しにつながり(7頁)、」

「従業員数300人未満の企業では、「300人以上」の企業に比べて「輸入比率が」「輸出比率」を大きく上回っており、円安に起因した輸入物価高による利益下押しの影響を受けやすいといえる(14頁)。」

白書は「中小企業・小規模事業者が最も重視する経営課題は共に「人材確保」と回答する割合が最も高く、「中規模企業」では「省力化・生産性向上」、「小規模事業者」では「事業承継(後継者不在を含む)」の回答割合が「人材確保」に次いで高(16頁)。」いことを指摘しています。

このアンケートの後のイベントとしては、トランプ大統領の再登場があります。160円台という極端な円安はトランプ大統領の再登場等によって是正され、景気腰折れを避けたい日銀は円金利を上げづらくはなりましたが、関税の影響が出始めるであろう半年~1年後頃まで見通すと、中小企業経営者の景気先行き観は厳しそうです。

おそらく多くの日本企業においては、最終的に在米国の輸入企業(すなわち関税を直接負担する企業)に製品・商品が届く場合、その在米国の輸入企業は日本企業自身のグループ会社であったり、日本の取引先企業の米国法人であったりすると思われますので、中小企業にとって一番の脅威は取引先からの値下げ要請、またはグループ内での採算悪化であろうと思います。つまり、2025年度や2026年度は、2021年以後、初めての減収・減益基調となるかもしれません。

値下げ要請やグループ内での採算悪化に対してどう対処するかは、極めて難しい経営課題になりますが、上述の通り、「人材確保や事業承継」が悩みどころのいまできることは、やはり業務自体の抜本的見直ししかないと思います。人が足りないなら、業務を減らすしかありません。

ただし、足許のトランプ関税(4年で退任する外国の大統領の属人的、日和見的政策)に対応するためだけに業務を抜本的に見直すというのは、問題が矮小化・弥縫策化されすぎ、本質的な業務改善からむしろ遠ざかってしまう危険性があります。

せっかく業務を抜本的に見直すのであれば、BCP的観点を加えることが有意義です。トランプ大統領の行動も予測不可能又は予測が極めて困難ですが、自然災害がいつ発生するかは100%予測不可能です。ですが、備えることはできます。

トランプ関税問題を契機に(まさしく一種の災害と捉え)、BCP策定をご検討されてはいかがでしょうか?好事例は先にご紹介した通りです。https://ktanaka-capls.com/knowledge-transfer/sme/for-your-business-continuity-planning/4134/

中小企業は全企業の99.7%で336.5万者、中小企業の従業員数は全体の約70%で3,310万人(2021年)総務省・経済産業省「令和3年経済センサスー活動調査」ここでの中小企業者とは、最大でも資本金3億円以下または常時雇用する従業員が300人以下(製造業・建設業・運輸業、卸売業、サービス業、小売業を除くその他業種の場合)。なお業種によっては上記指標以外の数値が用いられますが、資本金については3億円が上限となっています。詳細割愛)

出典:2025年版「中小企業白書」中小企業庁 令和7年4月25日

詳しくはhttps://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/PDF/chusho.html

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