世界45か国を観てきた行政書士が作りたいBCP(事業継続計画)⑦ 緊急時の日本語

2月の訪日外客数は325万8,100人で、前年同月比では16.9%増となった。(中略) 2月として初めて300万人を突破した。ベトナムで単月過去最高を更新したほか、19市場(韓国、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧地域、中東地域)で2月として過去最高を記録した。(日本政府観光局HPより引用抜粋)

総務省によれば、2024年1月1日現在日本に暮らす外国人は332万人を超えていて、毎月同規模の観光客が日本を訪れているということは、一時的に600万人以上の外国人が日本にいる計算になります。同じく総務省によれば、2024年1月1日現在千葉県の人口は631万人です。千葉県より人口の多い府県は、神奈川県920万人、大阪府877万人、愛知県750万人、埼玉県727万人です(東京都は1,391万人)。そういう目線で見てみると、日本にいる外国人がいかに多いか実感できます。

私が暮らす中野区について言うと、中野区HPによれば、2025年3月1日現在中野区民約34万人のうち2万4千人が外国籍区民です。区の中心部では外国人(観光客)が時間帯によっては地元民を凌駕するくらい多く、地元商店街を潤す経済効果は絶大です。新宿から中央線で一駅という利便性とサブカルの聖地としての知名度アップによるものでしょうか。そしてたしかに人種的・民族的多様性を実感します。

他方、少子高齢化が進む日本では、外国人の社会参加が不可欠です。多文化共生社会の本格的到来を日々感じます。おそらく日本で暮らす外国人の方々は、自分の仕事や日常生活においてはほとんど支障なく、日本語を使える人たちだと思います。私も11年間海外で暮らしてみて、自らの仕事や日常生活に直接関係する言葉に関しては3か月もすればほとんど支障なくなりました。しかし外国人は災害時要配慮者に含まれています。

災害発生時に情報入手や避難行動において制約を受けやすい高齢者、障がい者、病症者、乳幼児、妊婦、外国人などは、「災害時要配慮者」と呼ばれる(認定特定非営利活動法人 日本防災士機構 防災士教本2024年度版)。

私も長くスペイン語世界で暮らしましたが、自然災害や緊急避難、政情不安、テロ、コロナに代表される新型感染症などについてのスペイン語はすんなり理解できませんでした。自分自身の語学力の拙さゆえかもしれませんが、普段使うことが少ない言葉は緊迫した状況では益々意味を理解し難くなります。更に、予め知っている単語でも文脈によって意味が異なるケースはきっとどの言語でもあるでしょう。そもそも急迫の事態では、その言葉を発する側も、普段とは違う話法になるのではないでしょうか?少なくとも普段よりゆっくりしゃべることは緊迫した状況下では難しいはずです。

BCPの観点では、外国人従業員とその家族の安否確認は非常に重要です。当然ですが、安否確認は全ての関係者について完了するまで終わりません。一人でも安否不明者がいれば、ずっと確認し続けることになります。仮に最悪の事態が発生してしまったとしても、その確認が終わるまでは、続けなくてはなりません。

本来であれば、外国人従業員の各母語で情報発信できるに越したことはないのですが、日本語からの多国語対応は、(日本に不慣れな外国人観光客にとっては最後の手段であるとしても)、本当の緊急時に充分な多国語対応が期待できるかというとまだ不安があります。今後、自動翻訳機能の信頼性がもっと高まることは期待できますが、ただでさえ刻一刻と状況が変化する災害時に即応できるレベルに到達するまではまだ時間がかかる気がします。

そこで必然的に、外国人従業員に対しては、緊急時に必須の日本語を普段からしっかり教育しておくことが経営者には求められます。例えば、地域の語学ボランティアなどに協力を仰ぎ、緊急事態で知っておくべき日本語をやさしく学ぶ機会を持つことができれば有効です。そうした企業努力は、有事の際に外国人従業員の安全を守ることに資するのみならず、彼ら彼女たちの働くモチベーションアップになり、企業の生産性向上につながることは間違いありません。

余談ですが、在留外国人の方と仕事でお話する機会がありました。その方は日本語を独学でお勉強され在留3年目でした。ここまでできるとは凄いなあと思いつつも、その方がマスク着用でやや小声であった上、私自身が加齢による聴覚低下が最近著しいこともあって、なかなかお話の内容がつかめません。なんども聞き返すことになり、とても失礼してしまいました。改めて、外国人の方が日本語を話されるときには、言葉の表面的意味だけではなく、相手がこちらに伝えようとしていることをきちんと理解できるだけの傾聴スキル向上が必要だと認識しました。私が外国で話していたスペイン語も、きっとこのように受け止められていたに違いないと思いつつ…。

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