元銀行マンの行政書士が作りたいBCP(事業継続計画)② トリアージの難しさ

”災害現場での医療活動で特に重要なのは「トリアージ(triage:選別)」「トリートメント(treatment:治療)」「トランスポーテーション(transportation:搬送)の「3つのT」である。(認定特定非営利活動法人日本防災士機構 防災士教本2024年度版)”

企業が災害に遭ったときも同じことが言えるかもしれません。なかでもトリアージが重要になってくると思います。すなわち、どの事業を存続させるかの判断です。ビジネスユニットが数多くある大企業ならともかくも、一般的な中小企業にとってコアビジネスはそんなに何種類もあるわけではないと思います。

しかしBCP(事業継続計画)の策定においては、被災直後から再稼働させる重要事業や商材を予め選別しておかなくてはなりません。これは非常に難しい経営判断だと思います。一人の経営者にとって同じような重さの事業が複数存在して、被災した場合に、真っ先に再稼働させる事業としていずれを選ぶべきなのか。かりに4つ、5つあれば、おそらく選別若しくは優先順位付けはできると思いますが、3つまでが一番難しい判断になるのではないでしょうか?

目の前のことだけを考慮すれば、最も収益性の高い事業に経営資源を優先的に投入するのが当たり前だと思います。しかし、実際にはそれほどシンプルなものではなく、経営者にとっては必ずしも儲かっていないけれど祖業ゆえに大切にしている事業もあれば、非常に重要なお取引先や得意先があって、その期待に応えるために、採算はさておき最優先で再稼働させなくてはならない事業もあるでしょうし、後継者への承継を前提に後継者育成の観点から、中長期的に注力したい事業や、将来の事業拡大として期待している事業もあると思います。

そうした状況下、いかにして順付けをすべきか。BCP策定のためであることはもちろん、経営方針そのものをゼロベースで見直す機会としてBCP策定を捉えるよりしかありません。昨今では、後継者不足や不在で、会社の存続基盤が揺らいでいるケースも多いので、後継者探しを起点に経営方針を見直すことが肝要です。次の世代がいるのか、いるのであれば今の事業をどうしたいのか?もしいない場合には、どのように探すのか?

そのためにまず必要なことはずばり、会社の株主名簿のアップデートです。

経営者自身が一人で全株を保有しているシンプルなケースは別ですが、発起人として株式を保有されている(いた)立ち上げ時の仲間も高齢化し、相続が発生しているケースがあります。株主名簿のアップデートはもとより、株券発行会社であるのに、株券がどこにあるのかトレースできていない等、株式関連事務の煩雑さは、事業承継におけるネックになります。

自然災害などで、経営者であり主たる株主である方が万が一落命してしまったとき、あとに残る人々は困り果てることになります。BCP策定のタイミングで株主名簿をアップデートしておけば、災害発生後に株主総会の開催や取締役選任が必要なとき速やかにできます。もし株券を発行しているのであれば、株券発行を取りやめるなどの会社法上の手続を済ませておくことが必要だと思います。そして、あまり考えたくはないかもしれませんが、公正証書遺言作成も有効だと思います。

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