戦争という事業上のリスクをどのように考えるべきでしょうか?その3

まだよくわかりませんが、停戦合意で最悪の事態は免れたようです。1日いや1時間でも早い完全終結を望みます。

そこで視点を変えて、戦後復興需要という(好ましくはないですが、現実として)中長期的な機会がありえる面も考えていま何かできることはないか考察してみるのも一案だと思います。

日本企業の知見・技術、なにより納期を守る期日管理の厳格さや品質面での高い信頼は絶大です。とりわけ新興国において日本製(または日本人が責任をもって引き受けてくれる仕事)への期待値は極めて高いです(あくまで私の経験上ですが)。

戦争で傷んだインフラの復旧・復興需要は早晩発生します。イランの体制がアメリカなどが望む方向へ変われば、日本をはじめとする諸外国が(おそらく筆頭は中国でしょうが)イランの戦後復興を積極的に支援すると思われます。そうした場面での国際協力には、一般に日本政府系組織等の公的機関や世界銀行系組織等の国際機関による保証等が付されることが多いので、通常の輸出よりは債権回収リスクが低減されるはずです。

イラン以外でも天然資源頼みのモノカルチャー経済から脱却したい中東諸国にとって我が国への期待はこれまで以上に高まると思います。天然資源も輸送路を断たれるとおカネにならないことが改めて強く世界中に印象付けられてしまいました。

もっとも、中東で本格的な復旧・復興が始まると、一時的かもしれませんが、日本にとっては労働力の取り合いになる可能性があるかもしれません。東南アジアや南アジアの人材は中東における貴重な労働資源であり、早期復興のため、中東諸国はより多くの人材を確保する動きが出てくるのではないかと推測します。当然、従来より高い報酬が用意されるでしょうから、日本で多くの外国人従業員を抱える事業者にとっては、人材獲得面で考慮すべき要素が一つ増える可能性があると考えます。

有史以来ずっと海の要衝であったホルムズ海峡は今後もその重要性を完全に失うことはないと思いますが、一方でリスク分散の必要性が強く世界中に認識されたことは間違いありません。勝手な推測ですが、仮に安全にホルムズ海峡が開放されたとしても、往来する船舶の海上保険料や乗組員の報酬は、これまでより高額になるのではないでしょうか。もしそうだとすれば、間接的・結果的に私たちがそのコストを負担することにもなりかねません。

中東以外で目を向けて見るべきエリアとして中南米にもスポットライトがあたっているようです。中南米は約6億人の大市場であり、おしなべて親日的であり、資源が豊富であり、なにより宗教はほぼカトリック教で、言語もスペイン語とポルトガル語でほぼ統一されている(他の言語は必要とされるとしても英語やフランス語)という強みがあります。もっとも、中国は既に深く入り込んでいます。

たしかにかつての中南米は財政破綻した国もあり、ハイパーインフレで市民生活が圧迫され、貧富の差から、仕事をするより強盗をした方が手っ取り早く稼げるので治安も良くない、等あまりいい印象のないエリアでした。実際、私が暮らしていたときも、拳銃強盗に遭うかもしれない不安は常にありました。オフィスでの就業中に本物の銃声を聞いた経験もあります(幸い被害者は命に別状なし)。

(余談ですが、当時勤めていた会社の車は重厚な防弾仕様でした。後部座席の窓ガラスは分厚くて重すぎるため開閉できませんでした。そもそも鉄の塊が鉄の服を着ているという異常に重たいクルマだったので、もし水に落ちたら瞬く間に沈んでいき脱出不可能となる別の怖さがありました。)

今の中南米は治安に関しては良くなったという話は残念ながら聞こえてきませんが、治安面に少し目をつぶって市場調査してみる価値はあると思います。戦争と違って、強盗などの治安問題は、行動する時間と場所を選べば、案外大丈夫です。

経済規模の大きさではブラジルとメキシコが常に注目されますが、他にも良い国はあります。2016年~2020年まで私はペルーに駐在していました。当時から財政とインフレ、通貨の安定性に関しては優等生でした。直近でもペルー中央銀行HPによれば、2025年末のペルーの公的債務の対GDP比は30.2%です。わが国の同指標が200%超であることと比較するといかに財政的に健全であるかがよくわかります。ペルーは銅をはじめ現代社会に必要不可欠な天然資源が豊富です。天然ガス産出国でもあります。環太平洋という地理的優位性はこれからもっと評価される可能性が高いと思います。

中南米ではいきなりミサイルや戦闘機が頭上を飛び交うかもしれないという恐怖はありません。ベネズエラやキューバにはそのリスクがあるかもしれませんが、西半球をテリトリーと公言して憚らないアメリカはカリブ海で起こる事態を放り出すことはないでしょう(そのこと自体の良し悪しは別ですが)。

いまこそ、これまでとは違う視点で事業の将来について考えてみる、そんな機会として捉えることで、無駄な代償を支払わされているひとりの市民として一矢を報いたいものです。

出典:ペルー共和国中央銀行HP Deuda Pública (% PBI)

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