成田空港近隣での大規模開発で分配金が滞っているニュースが大きく報じられています。しかし、形式上要件が充足されていれば許認可を出さざるを得ない行政庁の立場として「市があたかも開発にお墨付きを与えたとする評価は妥当しない」という市長の弁明には根拠があると私は考えます。一般に許認可は、事業開始の必要最低限のルールを守っていることの証ではあっても、個別具体的な内容・品質までをも行政が保証してくれるものでは”残念ながら”ありません。
今回の事業会社は自社HPで「不動産特定共同事業法に基づき、対象不動産から得られる賃貸利益を分配原資とする不動産投資商品です。」と説明しています。事業会社のHPによれば、東京都知事と大阪府知事の許可を得ています。
では不動産特定共同事業法とはどのような法律なのでしょうか
不動産特定共同事業法(e-GOV法令検索より抜粋)
(目的)
第一条 この法律は、不動産特定共同事業を営む者について許可等の制度を実施して、その業務の遂行に当たっての責務等を明らかにし、及び事業参加者が受けることのある損害を防止するため必要な措置を講ずることにより、その業務の適正な運営を確保し、もって事業参加者の利益の保護を図るとともに、不動産特定共同事業の健全な発達に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律(第十一章を除く。)において「不動産」とは、宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第一号に掲げる宅地又は建物をいう。~中略~4この法律において「不動産特定共同事業」とは、次に掲げる行為で業として行うものをいう。一 不動産特定共同事業契約を締結して当該不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う行為~以下略~
(不動産特定共同事業の許可)
第三条 不動産特定共同事業を営もうとする者は、主務大臣(一の都道府県の区域内にのみ事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置して不動産特定共同事業を行おうとする者(第三号事業又は第四号事業を行おうとする者を除く。)にあっては、当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事)の許可を受けなければならない。
(約款に基づく契約の締結)
第二十三条 不動産特定共同事業者は、不動産特定共同事業契約の締結をするときは、第三条第一項の許可又は第九条第一項の認可に係る不動産特定共同事業契約約款に基づいて、これをしなければならない。
→ということは、約款(つまり個人投資家からの資金集めの規定)は知事の許可を受けた時に内容をチェックされていますので投資家が契約書に落ち度があると主張することは難しいと考えます。投資は自己責任です。
→では投資家を保護する術はないのでしょうか?
(指示)
第三十四条 主務大臣又は都道府県知事は、その第三条第一項の許可を受けた不動産特定共同事業者が次の各号のいずれかに該当するとき、又はこの法律の規定に違反したときは、当該不動産特定共同事業者に対し、必要な指示をすることができる。
一 業務に関し、事業参加者に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき。
二 業務に関し、その公正を害する行為をしたとき、又はその公正を害するおそれが大であるとき。
三 業務に関し他の法令に違反し、不動産特定共同事業者として不適当であると認められるとき。~以下略~
(業務停止命令)
第三十五条 主務大臣又は都道府県知事は、その第三条第一項の許可を受けた不動産特定共同事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該不動産特定共同事業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
一 前条第一項各号のいずれかに該当するとき。~以下略~
(許可の取消し)
第三十六条 主務大臣又は都道府県知事は、その第三条第一項の許可を受けた不動産特定共同事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該不動産特定共同事業者に対し、同項の許可を取り消すことができる。~中略~五 前条第一項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき、又は同条第一項若しくは第二項の規定による業務の停止の命令に違反したとき。~以下略~
→つまり、「事業参加者に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき」に該当すると知事が判断した場合には、必要な指示をすることができ、場合によっては許可を取り消すことができます。
→ただ「事業参加者に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき」の判断は争点になり、その主張・立証は原告にとって容易ではないかもしれません。
しかし、事業会社を論駁する点があるとしたら、以下に規定されている「財産の分別管理」義務違反に該当するのではないか、という点が有力であると個人的に考えます。
(財産の分別管理)
第二十七条 不動産特定共同事業者は、主務省令で定めるところにより、不動産特定共同事業契約に係る財産を、自己の固有財産及び他の不動産特定共同事業契約に係る財産と分別して管理しなければならない。
→2千億円もの資金を集めておきながら、ほぼ更地のままでほとんど建物が建っていない状態とは、いったいそのおカネはどこへ行ってしまったのだろうか?というのは、おそらく誰しもが抱く素朴な疑問です。もしも、他の案件の分配金等に充当されていたりしたら、分別管理義務違反になる可能性が高いと考えます。分別管理義務に違反しているとしたら、許可取消しの根拠になると個人的に考えます。
ちなみに、不特定多数の個人投資家からいわゆるファンド資金を集めて金融商品へ投資する行為は、金融商品取引法基づいて内閣総理大臣宛に登録手続きをする義務がありますが、金融庁HPには「登録や届出を行っている業者についても、金融庁・財務局が、その業者の信用力等を保証するものではありません。登録業者等からファンドへの出資の勧誘等を受けた場合でも、その業者の信用力を慎重に見極めるとともに、取引内容を十分に理解したうえで、投資を行うかどうかの判断をすることが重要です。」と記載されています。
投資は自己責任で進めるほかありません。