行政不服申立てのお手伝い~特定行政書士業務

みなさま、おけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、本日2026年1月1日は、私たち特定行政書士にとって特別な日です。昨年6月の通常国会で成立した改正行政書士法が施行されたからです。

改正点はいろいろありますが、個人的に最も関心の高いテーマは、後述する行政不服申立ての代理人に就任することができる、特定行政書士という資格内資格の業務範囲が拡大したことです。時々勘違いされるのですが、特定行政書士は、”特定のことしかできない”行政書士ではありません。”特定のことができる”行政書士です。

改正前→”行政書士が「作成した」官公署に提出する書類に係る許認可等”、が不許可になる等、申請者等の満足のいかない結果になってしまった事案の行政不服申立てにおいて特定行政書士が申請者等の代理人に就任できる。

改正後→”行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類に係る許認可等”(以下同じ)。

行政書士が既に関与した案件なのか、それとも実際には関与していないが関与することができる案件なのかには、ものすごく大きな違いがあります。

そもそも行政不服申立てとはどのような場面で使うのでしょうか?

例えば、ホテル開業等何らかの許認可を申請したが許認可が下りなかったり(これを一般に不許可処分といいます)、既に持っているレストランの営業許可が取り消されたり(これを一般に不利益処分といいます)、許認可を申請したが、いつまでたっても行政機関から反応がない場合(これを一般に申請に対する不作為といいます)が行政手続においては起こりえます。

不許可処分や不利益処分にもいろいろな要因があります。たとえば申請者が許認可の欠格事由に該当していて、欠格事由が解消しない限り、なんど申請しても許認可を受けることはできない状況である等、行政機関の判断に一点の曇りもなく正しい場合はもちろんあります。もし、悪質な法令違反をしていれば、レストランの営業許可が取り消されても仕方ありません。

また、一度不許可になっても、申請内容を見直して、説明をもっと掘り下げたり、文章を差し替えたりして、新たに申請すれば同じ内容でも許可される場合があります。ただ、たとえ申請者にとって焼き直しの申請であっても、行政手続上はまったくの新規扱いになりますから、手間・コスト・時間は初回と同じだけ要します。

しかし必ずしも全ての申請者等が行政機関の判断にすんなり納得するとは限りません。何かを言いたい人もいるはずです。そこで行政機関の判断や行為に不満を持つ人を救済する措置が法律で用意されています。

そのひとつは、費用と時間がかかることを覚悟の上で、弁護士を雇って訴訟を提起することです。国や市区町村等を相手取って裁判を起こすことは、よほどのことがない限り、一般市民にはハードルが高く難しいと思います。このテーマは弁護士先生マターなのでここではこれ以上言及しません。

そしてもうひとつが、行政不服審査法が規定する行政不服申立てです。不服申立てという言葉にはなんとなくイメージがわくかもしれませんが、少し乱暴であることを覚悟の上でざっくり言うと、「行政機関の判断のやり直しを求める行為」であると私は理解・整理しています。少なくとも裁判よりは簡易な手続きですが、かならずしも使い勝手が良い制度ではありません。行政不服審査法はおよそ普通の人が聞き及ぶことは少ないであろう法律ですが、その法律に基づいて行政機関相手に簡易的な裁判のような手続に臨まなくてはならないからです。

行政不服申立て手段の基本的類型として、審査請求という制度が多くの行政手続に用意されています。法令上、社会保険労務士や税理士等の特定の士業にしかできない審査請求もありますが、ここでは割愛します。

ちなみに、審査という言葉の一般的な意味を辞書で引くと、「ある案件や事柄を審議して、査定すること。~中略~ 精査。」とありました。審議とは「くわしく調べ検討して、その可否を討議すること。また、審査して評議すること。」そして討議とは「あることについて意見を述べて論じ合うこと。討論。ディスカッション」です。(出典:小学館 精選版 日本国語大辞典2006)

要するに審査請求とは、”なにかについて関係者で調査し、意見を述べて判断する場を求める。”といった意味に理解すればこの文脈では問題ないと思います。原則、審査請求は書面で行いますが、審査請求した人には一定条件のもと、口頭で意見を述べる権利が保障されているので、審査請求という言葉の本来の意味に沿った手続が実施されていると言えます。

もっとも、一般市民はこのような手続に通常不慣れですから、行政機関には説明義務が課せられています。たとえば「この○○処分に不服がある場合は、この通知書を受け取った日の翌日から起算して3カ月以内に✕✕(例えば知事市区村長等)に対して審査請求をすることができます。」など”教示”する義務が行政機関にはあります。

行政機関の判断に不服がある申請者等は、その判断のやり直しを求めて、行政機関からの教示等に従って審査請求をします。特段の書式指定はありませんが、東京都総務局総務部法務課が標準的な書式を公開しています。審査請求を受け付けた組織(=審査庁といいます。たとえば東京都知事)は、原則その組織に属する職員のなかから、審理員といういわば裁判官のような立場の人を選任します。

以後、審査請求した人すなわち裁判における原告と、当初の申請を不許可等とした人(たとえば市区町村長/裁判における被告)との間で双方が意見の主張や証拠の提示を行います。審理員は、そのやり取りを踏まえてどちらの言い分が妥当か判断します。審査請求をした人には、この過程において書面では説明しきれないことを口頭で述べる機会が保障されています。権利であって義務ではありません。

審査請求と裁判との一番大きな違いは次の点にあると一般的に考えられています。裁判は法律のプロ同士の戦いですので、相手方に有利になり、自分には不利になることを自分で認めてしまったり、自分にとって重要な証拠を裁判官に提示することを忘れたりしても、裁判官はそれを助けてはくれませんが、審査請求においては、裁判官に当たる人が、原告に当たる審査請求した一般市民を、通常の裁判よりはサポートしてくれる可能性がある点です。

被告に当たる相手方は行政手続を所管する側ですから、一般市民との間には圧倒的な情報量の差、理解の差、経験値の差があります。ですので対等に勝負させられると一般市民は不利な状況におかれ、市民の権利利益を救済するための審査請求という制度が意味をなさなくなるからです。但し、今後はそうともいえなくなります。

”行政不服審査法には職権探知が可能かについて明文の規定はないが、通説は、これを肯定している。その理由は、以下の2点に求められる。第1は、同法は行政過程における争訟制度を定めたものであり、行政救済のみならず行政統制も目的としていることから、当事者が主張していない事実であっても、公益の実現のために、審査庁は積極的に事実を調査すべきと考えられることである。第2は、通常は代理人に依頼せずに審査請求人本人が審査請求手続を行うのであるから、審査請求人の専門知識の不足を職権探知により補うことが、実質的な公正を確保する上で必要であることである。”(引用文献:行政法概説Ⅱ 行政救済法【第8版】宇賀克也 64頁)

この文章は、①行政不服申立ては行政自身が襟を正す機会でもあること、②自力で審査請求する一般市民と行政との情報量・知識量の差を公平性の観点から埋める必要があること、から、当事者が主張していないが、もし主張すれば自身に有利になることをも、審査庁が必要であると判断すれば審査庁自ら調べることを認めるべき、という趣旨です。しかし私たち特定行政書士が代理人となる場合には、通常の裁判と同様、法律のプロ同士の戦いというステージに上がることから、今後②に関しては審査庁の配慮が少なくなる、もしくは必要なくなると予想されます。

双方が意見の主張と証拠の提示をし尽くしたら、審理員がどちらの言い分が正しいかを判断し、審査庁がなすべき判断(これを裁決といいます)に関する意見書を出します。”審理員意見書は「審査庁がなすべき裁決」に関する意見を記載するものであり、したがって事実認定のみならず、結論まで審査庁に提示するものである。”(引用文献:コンメンタール行政法Ⅰ 行政手続法・行政不服審査法 第3版 476頁)

審査庁は審理員意見書に基づき、審査請求が妥当であるか否かを判断します。妥当であると判断すれば、不許可等とした当初の処分は取り消され、申請はまだ何も判断されていない原始状態へ戻ります。そして一度は不許可等にする判断を下した行政機関は審査請求の結果を踏まえ、その申請についてもういちど判断をやり直す義務を負い、結果的に当初の判断が覆って許可される可能性も出てきます。

私たち行政書士は許認可申請をお手伝いすることが重要な役割ですので、私たちが代理申請しておきながら許認可を得ることができないとしたら、それはその申請自体が最初から難しいものであった可能性が高いと言えます。つまり不服を申立てても勝てる可能性はあまり高くないかもしれません。

しかし残念ながら行政書士の存在そのものが認知されていない案件もあるでしょうし、行政書士報酬をセーブしたいと考える人も多いでしょうから、行政書士が一切関与しない許認可申請も世の中にはたくさんあるはずです。

仮に自分で申請して不許可になると、これまでのルールでは、新たに申請し直す(そこから行政書士がお手伝いすることはもちろん従来から可能です)、自力で審査請求する、弁護士を雇って審査請求または訴訟を提起するという選択肢になっていました。行政書士がまったく関与していない案件の審査請求では、特定行政書士であっても相談相手になることしかできませんでした。私たち行政書士は行政手続の専門家であるにもかかわらず、十分に関与することができなかったのです。

今般の法改正でその難点が解消しました。今後多くなると私たちが想定するのは電子許認可申請における不許可処分等ですが、法令上、行政書士が関与することができる事案であれば、行政不服申立てが必要となったとき、特定行政書士は代理人として行政不服申立てのお手伝いをすることが可能になりました。

上述の重要ポイントを筆頭に、もちろんこれまで以上に、責任の重い仕事になりますので、私たち自身の不断のスキルアップや関係法令に関する深く正確な理解とその応用力、すなわち個別具体的事案において、依頼者である審査請求をする人にとって有利な結果を導くための論理構成力と弁論能力が求められますが、とてもやりがいのあるミッションです。

行政不服審査法 (目的等)第一条 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。2. 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。(出典:e-Gov 法令検索)

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