2千年前のお話とは思えないほど、現代社会にも通じる社会問題が書かれていました。それを読者に伝えること、そして読者が現代社会における問題解決のヒントとすること、が著者の一番重要な目的であったので、より鮮明な印象を受けました。
ローマ帝国が滅んだ原因が何だったのかについては、専門家でも意見が分かれていて、今なお研究が続けられているそうですが、次のようなくだりがありました。
「ローマもゲルマン人が少数であったときは、余裕を持って受け入れていたものが、数が急増し、ローマの内部深くにまで彼らが入ってきたことで、文明の衝突が争いへと発展しています。しかし、古代末期(注:ローマ帝国の衰亡期)を研究する人々の間で、この問題は、入ってきた側にあるのではなく、受け入れる側の変質にこそ、問題の本質があるという見方がクローズアップされてきています。」
外敵の侵略から領土を守るために雇った外国人兵士がローマ社会に根付いていくにしたがって、外国人のローマ社会への参画が活発になり、ローマ社会内でのコンフリクトが看過できなくなってしまった。寛容から不寛容へと変わってしまった、という趣旨と理解しました。
日本社会に必要のない外国人が一部存在することは残念ながら事実であり、日本のルールを守ることができない一部の人たちは可及的速やかに退出してほしいと思うのは日本人としては当然ですが、実際には「外国籍の人々に、いくつかある選択肢のなかから日本を選んで働きに来てもらっている」のが多くの場合に当てはまる事実だと思います。
参考図書:教養としての「ローマ史」の読み方(本村凌二/PHP文庫)