日本人の減少と外国人の増加

総務省によれば2024年10月1日現在の我が国の総人口推計は1億2,380万2千人(前年比55万人減)で14年連続で減少。うち外国人は350万6千人(前年同月比34万2千人増)で外国人比率は2.83%です。実に352万人の静岡県民に匹敵する人数です。すなわち日本人に限ると89万8千人減っている衝撃的な数字です。 

https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2024np/index.html

外国人の増加は確かに実感します。私の住む東京都中野区の2025年4月1日現在の人口は34万2千人でうち外国人は2万4千人の7.25%です。https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/toukei-cyousa/jinkou/jinkou/jinkou2025.html

最も減り幅が大きい年齢層は15歳未満人口で1,383万人、前年同月比34万3千人減。つまり1年間で、東京都中野区の人口に相当する、そして15歳未満人口の減少分に等しい人数だけ外国人が増えた計算になります。なかなか凄い勢いだと思いました。私たち行政書士は外国人の在留資格取得支援も主要業務のひとつとして行っています。

しかしこの数字の凸凹は当然ながら、因果関係があります。労働人口(15歳から64歳)は7,372万8千人の前年同月比22万4千人減で、まさにこの減少部分を外国人の増加で支えていることになります。ちなみに、75歳以上人口は2,077万7千人で前年同月比70万人増です。なお沖縄県だけが、15歳未満人口の割合(15.8%)が75歳以上人口の割合(11.7%)を上回っています。

ところで、私が勝手に尊敬している楠木建先生の共著”逆・タイムマシン経営論”によれば、

「明治時代から1980年ごろまでの100年間、日本では一貫して人口増加が問題視されてきました。~中略~ところが、1990年代にようやく人口減少の兆しが出てくると、人々は手のひらを返したように「人口減少は諸悪の根源!」「少子化対策は喫緊の課題!」と言い始めるのです。~中略~少子高齢化は間違いなく進行しますが、幸か不幸か、人はいずれ亡くなります。日本は世界に先駆けて「高齢者の絶対数の増大が止まる国」でもあるのです。~中略~逆・タイムマシンから見える日本の人口問題における歴史風景は、時間的に広い視野を持ち、問題を歴史的な文脈に置いて考えることの大切さをわれわれに教えています。」(参考書籍:逆・タイムマシン経営論 楠木建 杉浦泰 日経BP  詳しくはぜひお買い求めの上、お読みください)

という著述があります。人口減少が続くと言っても、世界的に見れば、1億人以上の人口を持つ国は16か国で、世界200近い国数から言えば、きわめて少数派です。少なくとも私がこれまで暮らした国々は、駐在順にスペイン4,791万人、メキシコ1億3,086万人、ペルー3,428万人(人口はUnite Nations World Population Prospects 2024年の年央推計値)ですが、国家として機能不全に陥っているわけではありませんでした。人手不足という印象はありませんでした。

例えばペルーは国内だけでは就業機会が足らないので国外出稼ぎが多く、国外出稼ぎ労働者がペルーの家族へ送るいわゆる郷里送金が、重要な外貨獲得手段でした。メキシコから米国への移住希望者が多いのも周知の事実です。メキシコ人が多いロサンゼルスはメキシコ第二の都市というちょっと微妙なジョークも聞いたことがあります。実際、ロサンゼルスのダウンタウンはメキシコシティのダウンタウンにそっくりでした(歴史をたどれば、そもそも同じ国だったわけですが。ロサンゼルス という地名もスペイン語ですし)。

上述の著書では、「少子化に一定の歯止めがかかれば、あるところで人口減が止まり、定常状態を迎えます。」と述べています。現在いろいろな少子化対策が講じられているので、理にかなった政策が打ち出されているのだと思います。

つまり今は、生みの苦しみの過渡期・変革期であり、そしておそらくその過渡期は人の一生に照らすと短くはないので、終わりが見えないようにも思えますが、いつか終わるということと思います。そして誤解を恐れずに言えば、人が多すぎる社会より、少し足りないくらいの方が、住むのには適しているのかもしれません。

インフラ維持コスト等を勘案すれば、過疎の進む地方は(我がふるさとも例外ではなく)今後、コンパクトシティ化が必須だと思いますが、ダウンサイズしつつ、公共インフラを効率よく維持・活用し、適正規模の社会へと収斂していくことがこれからの日本が目指す姿なのだろうと思います。

余談ですが、先日中央線のある駅で電車を待っていたところ、富士・河口湖方面に行く特急列車が駅に停車しました。ざっと見た感じ、特急列車は満席でその乗客はほとんど外国人観光客でした。これだけの外国人観光客を観光地でアテンドするには、やはり同じ外国人の労働力が必要だろうと感じさせられました。

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